演習林は大佐渡北部の面積約500haの森林と佐渡市小田の研究・宿泊施設から成る森林科学の教育・研究施設で、昭和30年(1955)に設置され現在に至ります。森林の8 割以上を占める天然林には、スギ、ヒバ等の針葉樹、ミズナラ、イタヤカエデなどの落葉樹が生育しています。スギ天然林分には推定樹齢500年以上の巨木が多数存在しますが、冬期北西季節風と雪圧の影響を受けて倒伏と伏条更新を繰り返した複雑な樹形を取っているのが特徴です。江戸時代以降ほぼ禁伐で保存された天然林は佐渡島内ではこの演習林のみであり、多数の絶滅危惧動植物も生息するため学術的に重要なものです。この森林を利用して、森林科学にかかわる各種の学生実習と多様な研究、ならびに継続的な気象観測、森林動態モニタリングなどを行っています。
新潟大学は,野生絶滅したトキの野生復帰という世界的に注目されている事業の現場に立地する地元大学として,地域の自然再生を支援していくことを強く期待されています。里地里山の自然再生には,開発で失われた里山の自然環境の復元,里山に入り込んだ外来生物の駆除,農地の荒廃と狩猟圧の減少で顕在化した鳥獣害により劣化した生態系,および,自然と共存可能な地域社会の復元も含まれています。まず,佐渡のシンボルであるトキの再導入生物学を確立し,生物多様性の成り立ちを遺伝子,種,個体群,群集,生態系,景観の様々なレベルから解明し,生態系の復元手法を明確にし,地域社会が自然再生を受け入れ,トキと共存するための共生社会を提案する,“佐渡モデル”の確立を目指しています。次に,この"佐渡モデル"を日本国内や東アジア地域へ適用するために拡張・一般化することで,普遍的な「自然再生学」として体系化することを目指します。将来的には,稲作を主体とした農耕地からなる里山景観をもつアジア地域の大学・研究機関と連携し研究を進めることで,この中心的な「自然再生学」の教育・研究拠点となることを目指しています。
臨海実験所は、1954年に新潟大学理学部附属臨海実験所として発足しました。日本海側で最初の、そして新制大学としても最初の臨海実験所です。臨海実験所は、設置当初より、日本海の特性を背景に佐渡沿岸域に生息する海洋生物の多様性と特性を明らかにすると共に、フィールドワークを通した実践的海洋生物学教育を行うというミッションの基に、佐渡島に残されている豊かな自然環境と生物相を活用して高度な教育・研究を行ってきました。佐渡自然共生科学センター海洋領域/臨海実験所として、他の2施設と連携して、生物多様性の基盤となる森里海生態系の構造と機能を総合的に理解する教育・研究を展開し、生物多様性や環境についての高度な知識と見識をもった人材を育成します。
コミュニティデザイン室は、人びとが思いを語る対話の場をデザインし、地域にどのような課題やニーズがあるのかを明らかにしながら、課題解決のための取り組みをサポートすることを目的として、2020年1月1日にスタートしました。デザイン思考的アプローチを地域に浸透させていくことが、多様な課題と対峙する地域のレジリエンスを高めるという考えのもと、多様なアクターが問題意識を共有し、共に考え、解決策を見出す「対話型協働探究」の展開を重視しています。新潟大学ならびに外部の研究者や企業との連携を図りながら、自然共生という価値の追求と持続可能な地域の発展につながる実装型プロジェクトをコーディネートします。